研究概要 |
本研究に関連して,平成5年10月16日〜18日に名古屋工業大学で開催された日本金属学会第113回大会において,研究成果の一部を発表した。要旨は以下のとおりである。 Ti‐20%V合金がbeta単相となる800℃でプラズマ窒化を,また890℃でN_2またはNH_3によるガス窒化を行い,それぞれの窒化層組織を比較検討した。 N_2とH_2混合ガスプラズマによって,チタン合金を800℃において窒化した。放電電圧を一定にし,ヒーターの温度を制御することによって,試料温度を±2℃に保った。また,ガス窒化は,ガス雰囲気炉を用いて試料温度を890±1℃に保ち,N_2またはNH_3ガス気流中で行った。それぞれの窒化後,光学顕微鏡観察,X線回折,電子顕微鏡観察,ビッカース硬さ測定を行った。 窒化層は,試料表面から外部窒化層(TiN,Ti_2Nとで構成される),と島状の組織を示す内部窒化層とから成る。プラズマ窒化の場合,δ‐TiNとε‐Ti_2N,及びβ‐Tiとε‐Ti_2Nとの間に二種類の結晶方位関係が認められ,それぞれの相間では同一の方位関係であった。これに対し,ガス窒化では,β‐Tiとε-Ti_2Nとの間に二種類の方位関係が認められたが,δ‐TiNとε‐Ti_2N,及びβ‐Tiとδ‐TiNとの間には方位関係は認められなかった。表面硬さは,ガス窒化のHV=1700に対し,良好な耐摩耗性を示すとされるプラズマ窒化ではHV=1300と低い硬さを示した。 また,プラズマ診断を発行分光分析によって行った。この結果について解析をしており,更に詳細な実験を必要としている。特に,730nm付近のピーク(Hαの強度の約33%程度)は励起原子によるものと予測され,780〜785nmの範囲のピーク(Hαの強度に等しい)は分子からと予測される強い二つを検出している。これらのピークの素になっている励起種の解明と,この励起種がチタン合金のプラズマ窒化に及ぼす影響について今後研究を進める必要がある。
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