研究概要 |
本研究に関連して,平成6年6月16日〜18日に東京大学山上会館で開催されたプラズマ材料科学シンポジュウム第7回大会において研究成果の一部を発表し,SPMS-7(1994)pp139-146に"Effect of mixed hydrogen and nitrogen gas on the formation of TiN by plasma nitriding of titanium"と題した論文を投稿してProceed-ingsに掲載された。本研究の概要は以下のとおりである。 チタンのプラズマ窒化とチタン窒化物形成に及ぼす水素の影響について研究するために,100%N_2ガスと25%N_2-75%H_2混合ガスを用いて800℃で純チタン及びTi-20V合金のプラズマ窒化を行った。プラズマ窒化中,放電電圧を一定にし,ヒーターの温度を制御することによって試料温度を±2°に保った。試料の表面及びこれに垂直方向の断面において,光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡による組織観察を行った。視斜角入射X線回折によるプラズマ窒化による表面層の構造解析,XPSによる表面分析も行った。更に,プラズマ窒化中のプラズマ診断によってガスの種類によるプラズマ状態の変化を調べた。 N_2ガスのみによるプラズマよりも,N_2ガスに,H_2ガスを添加した混合ガスプラズマの方が,容易にTiNを形成することが判った。TiNは主として次の過程によって形成される。即ち,プラズマ中の励起種によるスパッタリングを伴わないチタンとの直接反応による過程と励起種とスパッタされたTiとが反応して試料表面に再吸着する過程とのいずれかである。また,N_2/H_2のガス混合比率はTiやTiNのスパッタリングに影響しないがTiN中の窒素濃度に影響を及ぼしている。 本助成研究によって,チタン及びチタン合金のプラズマ窒化による窒化層と窒化物の形成過程を明らかにすることができた。
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