本研究は、次世代コ-クス炉における高速熱分解操作を想定し、非粘結性石炭を含む種々の石炭を試料とし、異なったガス雰囲気ならびに圧力下、種々の速度で加熱したときの軟化および固化特性を、独自に開発した針入度計により測定することを目的として実施したものである。 初年度(平成5年度)では、石炭粒子ペレット上表面に直径が3mmの針状錘あるいは円盤状ピストンを載せ、試料の軟化や膨張による上下運動を差動トランスにより0.01mmの精度で検出するマイクロオートグレーブ測定システムを作製した。ついで、粘結性が大幅に異なる6種の内外炭を試料とした予備実験の結果、上記の針入と膨張が同一温度範囲で起こり、温度範囲は既存のギ-セラ-プラストメーターによる流動度変化の温度範囲とほぼ一致すること、これらの変化が石炭種や加熱速度により異なることなどの知見を得た。とくに、加熱速度が3K/minと小さな場合にはほとんど軟化しない石炭でも10K/min以上では軟化溶融性を示すようになることを発見した。 最終年度(平成6年度)では、まず広い操作条件下の測定と同時に針入曲線を解析して石炭の粘度変化を推算するモデルを開発した。すなわち、加熱中の各温度において瞬時定常を仮定し、針のニュートン流体中の落下を想定した運動方程式により測定した針入曲線を解析し、各温度におけるペレットの見掛け粘度を求めた。その結果、粘度の温度依存性は100kcal/mol以上と求まり、粘度変化を温度だけの関数として考えることは単純化しすぎであることが判明した。そこで、石炭が加熱中に軟化中間体および再固化物など他の物質へ逐次転化する反応過程を考慮したモデルを構築して、測定した針入曲線を解析した。その結果、このモデルが測定した針入曲線とこれに対する加熱速度や加熱保持温度などの操作条件の影響を説明できることが明かとなった。
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