最近、溶鋼の二次精錬時の脱りん、脱硫法が研究され、高純度鋼の吹錬に成果を挙げつつる。この時使用される工業用フラックスはCaO-Al_2O_3を基本としたCaO系フラックスである。このCaO-Al_2O_3系フラックスはESR(Electro Slag Remelting)法以外では、従来金属精錬にはほとんど利用されておらず、最近になってやっとLF(Ladle Furnace)法で使用され始めたばかりで、その熱力学的性質に関するデータは極めて不十分である。 申請者はこのCaO-Al_2O_3系フラックスをより積極的に金属精錬に利用することを提案し、先ず、本フラックスを酸化性雰囲気で使用すべく、CaO-Al_2O_3-Fe_xO_y系フラックスを溶銑、溶鋼と反応させ、本フラックスの脱りん、脱硫能を測定し、既に2、3の研究報告を行っている。 そこで本研究では、初年度はCaO-Al_2O_3系フラックスを還元性雰囲気で使用することを目標に、先ずその主反応と考えられる脱硫反応に注目し、CaO-Al_2O_3系、CaO-Al_2O_3-CaF_2系、更にCaO-Al_2O_3系フラックスに製鋼用炉材が溶解したCaO-Al_2O_3-MgO系スラグ、並びに転炉スラグの混入を想定したCaO-Al_2O_3-SiO_2系スラグのサルファイド・キャパシテイを1823-1923Kで測定した。またこれと並行して、これらのスラグ中への硫黄の飽和溶解度も測定した。 最終年度では、上記スラグ系とCuとを黒鉛るつぼ中で1823-1923Kで平衡させ、溶融金属中へ分配された極微量のAl、Ca、Mgの定量値から、既報のCu-Al、Cu-Mg、Cu-Ca系などの成分活量測定に関する研究結果を利用して、スラグ各成分の活量を測定した。またこれらのスラグと溶鉄を平衡させ硫黄分配を測定し、スラグ組成、溶鋼中脱酸元素濃度と温度の関数として表示した。
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