本年度は、昨年度に引き続き、非常に高い製錬能を持つカルシウム-ハライド化合物融体の熱力学的性質の測定を行った。さらに、測定データを基に、溶融メタルからのトランプエレメント不純物の除去挙動について考察した。 化学平衡法により、酸素との性質のわかっているジルコニウムとカルシウム系フラックスを平衡させることにより、フラックス中のカルシウムの活量を調べた。測定に用いたフラックスは、CaO_<satd.>-Ca-CaBr_2系、CaO_<satd.>-Ca-NaF、およびCaO_<satd.>-Ca-SrF_2系である。 実験方法は以下の通りである。Zr薄片(15mm×10mm×1mm)約2gとカルシウム-ハライド系フラックス約6gをいれたCaOるつぼを鉄るつぼ中に密閉し、所定の温度(1373K〜1573K)で48時間平衡させた。実験終了後、試料を急冷してZrの表面を研磨、洗浄し、Zr中の酸素濃度を測定し、フラックス中のカルシウムの活量をフラックス組成の関数として求めた。 CaO_<satd.>-Ca-SrF_2フラックスでは、X_<Ca>/(X_<Ca>+X_<SrF2>)が0.15以下でSrF_2が飽和し、Caの活量は0.04で一定となった。CaO_<satd.>-Ca-NaF系フラックスはX_<Ca>/(X_<Ca>+X_<NaF>)が0.6でCaの活量は0.48であることがわかった。CaO_<satd.>-Ca-CaBr_2系フラックスについてもCaの活量を測定した。また、この測定値とフラックスの構造のモデルから求めた活量の計算値とを比較検討した。 以上のように、カルシウム-ハライド系フラックス中のカルシウムの活量をフラックス組成の関数として得ることかできた。 これらの熱力学データからから、カルシウム系フラックスを用いた場合の、溶鉄中のトランプエレメント(アンチモン、砒素、ビスマス、鉛、すず)の濃度を見積もり、いずれの元素も、10^<-4>mass%以下に除去されることがわかった。このことから、本系フラックスによるレアメタルの高純度化も可能と考えられる。
|