研究概要 |
一方向凝固炉を用いてYBa_2Cu_3O_<7-X>仮焼粉(1-2-3試料)、或いはこれと211相仮焼粉の混合粉(1.2-2-3試料)の圧粉体を包晶温度以上の「融液+211相」の状態に加熱後、温度勾配下で徐冷し緻密な123相の柱状晶試料を作成した。溶融接合試料は、この柱状晶試料から切出したYBCO板状に粒状Agをのせ、雰囲気炉内で銀の融点温度以上に保持し接合した。固相接合試料は、YBCO板の上下に純Ag板をおきアルミナ板を介して空気雰囲気中種々の条件でホットプレスにより一定圧縮荷重で拡散接合させた。溶融法で作成したAg/YBCO接合体ではYBCOと溶融Agの界面反応が起こり、O_2雰囲気では1268K,30minと高温長時間では殆ど基盤全体に反応層ができ、また1258K,5minでは最大約600mumの反応層が形成された。これらの反応層では123相はなくなって211相が著しく多くなり、残部はBa,Cu濃度が高い融液相であった。これはK.Salamaらの報告のようにAgによるYBCO包晶温度の低下が生じ、123相が211相と融液相(L)に分解したためと考えられた。この包晶温度の低下量を実測した結果、30〜40Kを得た。Air雰囲気では、1258K,5minでは最大で約50mum程度の不均一な厚さの(211+L+Ag)反応層が生成したが、同じ条件のO_2雰囲気の場合に比べて反応層厚が小さい。しかしながら、これらの試料の界面抵抗率rhocはいずれも約10^<-8>〜10^<-9>OMEGA・m^2以上あり抵抗が大きい。これに対しAgの融点直上(1233K,5min)ではEPMA等で検出可能な反応層はないが、界面抵抗はやはり同程度あり改善されなかった。以上のように溶融法による接合体では、Agの融点近くを除けば融液相を含む反応層が生成し、123相の分解による超伝導特性の劣化により界面抵抗値は増大しやすいことから、これを改善する方法として、出来るだけ低温のAg融液をYBCO接触時に素早く凝固させて反応を抑える方法や、或いは、Ag添加により低下したYBCOの包晶点以下まで接合体を徐冷して再度123相を凝固させて回復させること等が考えられた。一方、固相接合法では、より低温で接合するため界面反応層が生成しにくく界面抵抗率のより小さい接合体が得られた。1.2-2-3/Ag接合体では、接合圧力2〜3MPaで接合温度が高いほどrhocは小さく1100K以上で約10^<-11>OMEGA・m^2であったが、873K以下では接合しなかった。接合圧力を16〜32MPaと高くすると界面抵抗値は873K,3600sで約2×10^<-12>OMEGA・m^2と小さくなった。1-2-3/Ag接合体でも同じ接合条件では類似の結果となった。これらの試料の界面部にEPMA及びSEMで検出可能な反応層は認められず、YBCO基盤中の211量によらず接合温度と圧力が高い程YBCOとAgの接合性は良くなり界面抵抗が小さくなった。
|