研究概要 |
凝固膨張型元素と凝固収縮型元素あるいは凝固膨張型元素同士を組み合わせたいくつかの合金系について高圧状態図を推定し、アモルファス形成条件の仮説をもとにアモルファス化が起こり得る系として、Bi-Sb系(全率固溶体型),Al-Ge系(共晶型)およびBi-In系(金属間化合物形成型)の3つの系について高圧凝固実験を行った。Bi-Sb合金のX線回析図形には特定の条件において約30-40°にブロードなビ-クが認められ、その後、常圧相に戻る現象が見られた。また、組織観察から鋳放し試料にはみられなかった微細な結晶粒が現われた。この微細な結晶粒は室温で高圧を負荷しただけの試料にもみられることから、高圧負荷により生じた高圧相が常圧相に相変態するときに現われたものと考えられる。Bi-20at%In合金の高圧凝固試料のX線回析図形には顕著な変化はみられなかったが、Bi-Sb系合金でみられた微細な結晶が観察された。鋳放し試料と高圧凝固試料について点分析により共晶組織の割合を調べたところ、高圧凝固試料は鋳放し試料よりBi/BiIn共晶量が増加していることが知られた。この割合から高圧での共晶点の位置がBi側に移動していることが示唆され、Bi-In系高圧状態図を推定した。Al-40at%Ge合金の高圧凝固試料のX線回析パターンには液体急冷法により得られている準安定γ_1相(Al_2Ge)とγ_2相(AlGe)の存在が認められ、これらの相は2カ月後においても安定に存在した。BSE組成像においは、γ_1相とγ_2相は縞状の共晶組織を形成しており、γ_1/γ_2共晶の平均組成は約37at%Geで鋳放し試料の共晶の平均ゲルマニウム濃度より約8at%高いことが知られた。これよりAl-Ge系高圧状態図を推定し、γ_1/γ_2共晶が現われるための臨界圧が10〜20kbarにあることを示した。また、液体急冷法において得られている共存相と冷却速度の関係との対比から、本系合金においてアモルファスを得るためには、100kbar近くの高圧が必要になることが予想された。
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