特別に改造した遠心式ボールミルを用いて数種類の粉体試料を粉砕し、その粉砕特性を比表面積の増加量から検討し、固体と媒液との反応生成物をガスクロマトグラフを用いて測定した。その結果、炭化ケイ素のように共有結合性の高い試料の粉砕特性は、媒液の種類によってほとんど影響を受けず、アルミナのようにイオン結合性の高い試料では、媒液の種類によって大きく影響されることが確認された。 粉砕後の気相の分析結果より、従来比較的安定とみなされていたセラミックス粉体においても、酸化物〜水系を除いてほとんどの系で水素およびメタンの発生が認められた。したがって、粉砕時あるいは粉砕によって生成した新生面上での、媒液としての水および有機液体のメカノケミカル反応の進行が明確なものとなった。また、共有結合性の高い炭化ケイ素などでは極性の強い液体中で、アルミナなどのイオン性のものについては、非極性溶媒中で水素の発生量がより多いことが確認された。これは、メカノケミカル反応の機構が粉砕試料の違いにより異なることを示している。特に発生量の著しいのは炭化ケイ素〜水、メタノールあるいはエタノール系であり、ヘキサンやベンゼン等の官能基のない有機液体系では水素発生量が少なく、メカノケミカル反応においてイオン性も大きく関与していると考えられる。なお、液相の分析では微量不純物との区別が不可能であったため、質量分析計を用いた測定も検討中である。 水素発生の特に著しい炭化けい素粉体について、水中およびメタノール中粉砕を窒素と酸素の雰囲気下で行い、水素発生量について比較検討した。その結果、酸素雰囲気下では、水素の発生量が減少し、これらの系におけるメカノケミカル反応においてラジカルが関与していることが推定された。
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