降雨、降雪(以下、降水と呼称)の利用に当たっては、含有イオン成分の総量を適時に高精度で知ることと水の化学的ならびに生化学的活性を示す一つの指標となる水の分子の動的構造についての情報が的確に得られることが重要である。 このため、平成4〜5年度の2回の降雪期に採取した降雪試料32例について含有成分の水質分析と超電導NMRによる水の分子の会合状態を示す半値幅の測定を行ない、それらの結果をもとに、以下の検討を行った。 1)全国の降水に共通的に適用できる電導度(共通電導度)の決定とそれを用いる簡便、高精度な降水中の含有イオン成分の総量推算法の確立。 2)^<17>O-超電導NMR分析による水の会合分子の半値幅の測定法と水の動的構造の定量的表示法の確立。 その結果、以下の結論と発表実績を上げた。 1)環境庁による全国29地点における酸性雨水質調査結果29例ならびに本研究の水質調査結果降雪32例の計61例をもとにイオン移動性を考慮して共通電導度を求め、11.470×10^<-4>[1/Ω・cm]を得た。(発表論文No.4) 2)平成6年度降雪試料12例を使用し、イオン総量推算法の精度の検証を行い、±6%以内で推算可能なことを示した。(発表論文No.4) 3)平成4年度降雪試料12例の内6例について温度(5〜80℃)で^<17>O-超電導NMR測定(25℃)を行って、半値幅の温度依存性を明らかにし、それらの結果より活性化エネルギーを求めた。これより、降雪には活性化エネルギーの異なる2種の水が存在し、中でも高温域において大きい活性化エネルギーを持つ水が高い化学的ならびに生化学的活性を示すと考えられる。(発表論文No.3)
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