本研究所の初年度である今年は、イオン化成膜法の基礎データを得るため、まず、TEOS蒸気発生器、TEOS蒸気をイオン化するalpha線源(^<241>Am)を用いたイオナイザー、赤外線加熱炉を用いた石英製CVD反応炉から構成される試験装置を作成した。ヘリウムガスで搬送したTEOS蒸気を、イオライザーでイオン化した後、酸素と混合し、CVD炉に導入した。この装置を用いて、酸素濃度を20vo1%で一定にし、反応温度、反応時間、TEOS濃度、イオン濃度を種々に変えたときに発生するクラスターイオンの個数濃度と粒度分布を微分型モビリティアナライザーと高性能凝縮核カウンターを用いた静電粒径測定法により測定した。粒径数60nm以下の超微粒子が反応炉温度300℃から発生し、その個数濃度は反応温度とともに急激に増加し、400℃で一定濃度に到達した(J of Materials Scienceに投稿中)。この超微粒子は、反応温度300℃では、イオン濃度の増加とともに発生濃度が増加し、その大部分は添加したイオンと同じ極性の電荷を持っていた。このことは、300℃では超微粒子が、TEOS蒸気のイオン化により発生したことを意味する。しかし、400℃以上では、イオン濃度に依存せず、粒子の大部分は電気的な中性であった。したがって、400℃以上では酸素によるTEOSの酸化反応が、微粒子生成の主な発生機構になっていると考えられる。また、超微粒子の大きさおよび濃度は、反応温度、反応時間、TEOS蒸気量が増えるにしたがい増加した。この実験で得られた平均粒径を反応時間に対してプロットし、その結果を外挿したところ、薄膜形成に寄与すると思われる粒径2-3nmのクラスターイオンは、反応時間2〜3秒で生成していることが明らかになった。(化学工学会94年秋季大会で発表予定)
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