研究概要 |
本年は、まず、イオン化CVD成膜システムの改良を行ない、ナノメータクラスター粒子のイオン化率の改善を行なった。その結果、炉内で生成したナノクラスター粒子の90%が電荷を持つようになった。反応炉温度300℃で、成膜電極の電圧を0kV,1.25kV,2.5kV,5kVと変えて成膜速度を測定したところ、成膜速度は電圧に比例し増加した。また、反応炉内のオゾン流量を上げ、全体の流速を、2倍にしたところ成膜速度は二分の一になった。これらの結果は、TEOS蒸気分子のイオン化による成膜促進が起こっていることを示している。また、このようにして作成した薄膜のFT-IRの吸収スペクトルは、TEOS/O_3CVD膜特有のプロファイルを示し、かつ、Si-OHおよびSi-OR基に起因する吸収ピークは比較的小さい。これは、イオン化CVD法で作成した膜は、絶縁性が良いことを意味する。次に、TEOS蒸気のキャリアーガスをヘリウムからα線の電離率が高い窒素、アルゴンに変えて成膜実験を行なった。その結果、窒素およびアルゴン中で作成した膜の成長速度は、ヘリウム中での成長速度よりも速かった。このことから、キャリアガス分子がまずイオン化し、その電荷移動によりTEOS分子が電荷を持つことがわかった。(第42回応用物理学会関係連合講演会で発表) さらに溝幅0.3μm,深さ0.4μmのトレンチ構造をもつSi基板への成膜を行ない、その形状をSEM観察した。その結果、高オゾン/TEOS濃度比で作成した膜が高流動性を示すことがわかった。高流動性膜が形成されるときに発生しているナノクラスターの構造解析から、高流動性薄膜を形成する気相中間体はエトキシ基を大量に含むことが明らかになった。
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