平成5年度は以下のことを行った。 1.通常、正常な肝実細胞はシャーレの上などでは一層にしか生えないが、人工肝臓として利用する場合は細胞同士が上下左右に接着し多層に生える、いわゆる三次元的に培養することが必要である。そこでまず、生体や細胞に無害な天然高分子であるアルギン酸カルシウムをゲル化材として用い、そこに細胞接着因子として知られているコラーゲンを混入した三次元包括ゲル担体を作成し、ラット肝実細胞の包括固定化に応用した。コラーゲン濃度を変えて肝実質細胞のアルブミン生産能を比較したところ、コラーゲンを0.7g/l包むゲルで最も高い生産性が得られ、培養7日後にコラーゲン無添加の担体と比較して3倍以上に達した。 2.肝実質細胞の生理機能の長期維持を目的として、アミノ酸、ビタミン、酵素などを培地中に添加してその効果について検討した。アミノ酸の中ではプロリン、ヒスチジン、アスパラギンが、ビタミンとしてはアスコルビン酸(ビタミンC)が、酵素としては活性酸素除去作用のあるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)やカタラーゼで添加効果があり、培養3日後のアルブミン分泌量で比較すると1.5から3倍の程度の生理機能の増強がみられた。またプロリン、ヒスチジン、ビタミンCを添加した三次元ゲル固定化培養を行ったところ、無添加の対照実験では10日後に3μg/10^6cells/dayまでアルブミン分泌量が低下するのに対して上記添加物を加えた三次元ゲル固定化培養では約10μg/10^6cells/dayの値を示し、10日以上にわたって高い生理機能を維持することがわかった。
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