1.動物細胞の三次元的固定化培養に適した担体の開発を試みるため、細胞接着因子、あるいは増殖因子捕捉能を持つヘパリンを架橋固定した三次元的マトリックス担体、また正電荷や負電荷をもつ担体を用いて浮遊性、付着性の動物細胞の高密度三次元固定化培養を行った。その結果セルロース系多孔性担体が優れた細胞固定化能を示し、かつ正電荷を付与した場合に到達細胞密度、生理活性物質生産性ともに最も高い値を示すことが明らかになった。 2.肝細胞は、いわゆる肝機能を発揮する実質細胞と、その機能発現を助ける非実質細胞(Kupffer細胞、類洞内皮細胞、伊東細胞など)からなる。バイオリアクター内で肝機能を発現させるためには、これらの細胞のうち肝実質細胞の生理機能を追跡し、長期に維持する培養方法を追求することが肝要である。このため培養期間でのグルコース濃度の影響について調べた。グルコース濃度を0.1〜3.0mMに変化させたところ初期アルブミン分泌量はグルコース濃度が低いほど高く、約8倍の差があることがわかった。肝機能は培養期間を通して徐々に低下する。特にグルコース濃度が低い場合は栄養源が枯渇するため顕著である。この低下を防ぐため、培養途中でグルコースを添加し機能維持を図った。培養4日目にLow(グルコース0.1mM)からHigh(グルコース10mM)にシフトした場合、培養14日目においても対照の約2倍のアルブミン分泌量を維持していた。このことから肝機能を維持するために、グルコース濃度を最適値に制御する培養方法が有効であることが明らかになった。
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