ダニアレルゲンの減感作治療薬(ワクチン)への応用

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05650802
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 小埜 和久 広島大学, 工学部, 助教授 (10144883)
• キーワード: ダニアレルギー / ダニアレルゲン / 減感作治療 / 気管支喘息 / 高分子アレルゲン / 低分子アレルゲン / 結膜反応活性 / T細胞活性化

研究概要

ダニアレルギー患者白血球ヒスタミン遊離測定により、減感作治療用抗原としては単一な抗原よりもむしろ、交差反応性の高い抗原の組み合わせが必要であることがわかった。そこで、減感作治療の第一歩として微量で複雑な組成のダニ粗抗原から、皮内反応活性、患者血清及び動物抗血清との反応性、並びに収量をもとに、生化学的手法により高反応性画分を分画した。この画分を用いて減感作治療を開始し、4〜12ヶ月を経過したダニ陽性気管支患者13例のうち、通年型喘息9例において、著明改善4例、中等度改善3例、不変2例で、季節型4例でも全例有効で無効例はなく、また、いずれの症例も喘息発作誘発やアナフィラキシ-などの明らかな副作用は認められず、この画分の安全性と有効性が示唆された。更に、この画分で減感作中の患者の抗体価の上昇、及び抗体サブクラスの変動、並びに好塩基球のアレルゲン感受性の変化と治療効果との相関性を継続解析中である。次に減感作症例を増やしてこの画分の有効性を検討しているところである。その他の特徴ある抗原として、(1)ダニ排泄物中の重要なアレルゲンの一つとして、糖含量の高い高分子糖蛋白質群(150-155k)を単離した。この成分のなかには、粘膜透過性の優れた低分子抗原と交差反応性のある成分を含み、免疫原性、及びT細胞活性化能が高く、また、アナフィラキシ-誘発性も全くないので、減感作治療用抗原、及びT細胞アナジーを誘導できる抗原としても有望と期待される。(2)同じダニ排泄物中の重要なアレルゲンの一つとして、唯一、結膜反応活性を示し粘膜透過性の優れた低分子抗原(4k)を単離した。発症抗原の可能性の高い抗原で、種々の高分子抗原の分解物である可能性があり、特に減感作著効画分と高い交差反応性を示すことより、ダニアレルギー特異的エピトープの構造解析に利用できる抗原である。また、T細胞アナジーを誘導できる抗原としても有望と期待される。

研究成果

• [文献書誌] T.Aki: "Cloning and characterization of cDNA coding for a new allergen from the house dust mite,Dermatophagoldes farinae" Int.Arch.Allergy Immunol.103. 349-356 (1994)
• [文献書誌] T.Aki: "Structure of IgE epltopes on a new 39kDa allergen molecule from the house dust mite,Dermatophagoides farinae" Int.Arch.Allergy Immunol.103. 357-364 (1994)
• [文献書誌] T.Aki: "Cloning and expression of cDNA coding for a new allergen from the house dust mite,Dermatophagoides faninae.Homology with human heat shock cognate protein in the heat shoch protein ^<70> family" J.Biochem.115. 435-440 (1994)
• [文献書誌] T.Yamaguchi: "Low-molecular-size allergens,LM-ls,infeces extract of Dermatophagoides farinae which elicit histamine release from washed blood cells of patients with bronchial asthma" Jpn.J.Allergol.43. 701-710 (1994)
• [文献書誌] T.Yamaguchi: "A low-molecular-size LM2 allergen in mite,Dermatophagoides farinae,extracts containing feces which elieits conjunctival reactions in patients with bronchial asthma" Jpn.J.Allergol.43. 815-824 (1994)
• [文献書誌] T.Aki: "Immunochemical characterization of recombinant and native tropomyosins as a new allergen from the house dust mite,Dermatophagoides farinae" J.Allergy Clin.Immunol.95(印刷中). (1995)