本研究を通して、減感作治療用抗原としては単一な抗原よりもむしろ、交差反応性の高い抗原の組み合わせが必要であることがわかった。そこで、減感作治療の第一歩としてダニ粗抗原から、皮内反応活性、患者血清及び動物抗血清との反応性の高い、治療に著効な画分を分画した。この画分には、喘息発作やアナフィラキシ-反応の誘発などの副作用はなく、安全性と有効性が認められた。更に、治療例を増やして患者の抗体価の上昇、及び抗体サブクラスの変動、並びに好塩基球のアレルゲン感受性の変化と治療効果との相関性を継続解析中である。その他の特徴ある抗原として、ダニ排泄物中から低分子抗原(4k)と高分子抗原群(150-155k)を単離した。粘膜透過性に優れ発症抗原の可能性の高い低分子抗原は、減感作著効画分と高い交差反応性を示すことより、ダニアレルギー特異的エピトープの構造解析に利用できる抗原である。一方、高分子抗原は、この低分子抗原と交差反応性を示し、免疫原性、及びT細胞活性化能の高い成分を含んでいるが、アナフィラキシ-誘発性を示さないので、減感作治療用抗原、及び低分子抗原と同様にT細胞アナジーを誘導できる抗原として有望である。しかし、ロットの異なるダニ飼育物から、安全・確実に奏効する高性能治療用抗原を、成分組成が一定で、且、永続的に力価も安定し、しかも多量に調整することは生化学的手法のみでは困難であると考えられる。そこで、動物抗血清及びダニアレルギー患者血清陽性クローンからcDNAcross-hybridizationにより、ダニアレルゲン遺伝子を9グループに分画した。このうち、これら発現産物の免疫生化学的特性の明らかになったものとして、ダニアレルギー患者IgEと高反応性を示すMag1(発現産物はマウスT細胞活性化能を示す)、Mag44(tropomyosin)、Mag3(組換え蛋白質が抗原特異的に強いヒト及びマウスT細胞活性化能を示す)、及び患者IgEとの反応性は少し弱いMag29(hsp70)、Mag124等がある。
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