研究課題/領域番号 |
05650804
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
生物・生体工学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松下 琢 九州大学, 工学部, 助手 (10209538)
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研究分担者 |
梶原 稔尚 九州大学, 工学部, 助教授 (10194747)
船津 和守 九州大学, 工学部, 教授 (80037960)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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キーワード | 三次元流動シミュレーション / スーパーコンピュータ / 動物細胞培養 / 撹拌槽型培養装置 / 剪断応力 / 応力履歴 / 粒子追跡法 / 293細胞 |
研究概要 |
1.昨年度までの研究成果により、撹拌翼先端の最大剪断応力の絶対値だけでなく、細胞が受ける剪断応力の履歴もまた細胞の代謝や生存率等に重大な影響を与えていることが示唆され、この応力の履歴を定量的に評価することの必要性が示された。そこでまず本研究で開発したスーパーコンピュータを用いた三次元流動シミュレーションによって、浮遊性細胞の培養に一般によく用いられる2枚平行パドル型撹拌槽(スピナ-フラスコ)内の三次元の速度場・応力場を60rpmという代表的な撹拌速度条件下で求めた。 2.次に本年度開発した粒子追跡のプログラムを用いて、この三次元流動場の中に流体と同じ比重を持つ粒子(仮想の細胞)をいろいろな位置に投入して、その粒子がどのような応力分布の中をどのように通過していくかを0.02秒の追跡時間間隔で90秒間シミュレーションを行った。その結果、撹拌翼下部に投入した着目粒子(細胞)は、撹拌翼の回転方向に回りながら翼の下部吐出により徐々に下がっていき、一度槽底付近まで落ちる後、回りながら少しずつ軸方向に向かって移動し、軸付近に存在する上昇流に乗って回転しながら上昇し、やがて元の位置に戻っていくことが明らかとなった。この一周期の時間は平均で30.6秒で、その間に受ける剪断応力の時間積分値(応力履歴)は、0.134[Pa・s]であった。 3.これまで開発した剪断応力負荷装置を用いて、弱付着性である293細胞の生存率が50%に低下する応力履歴が10440[Pa・s]であることが求められているので、今回計算に用いたスピナ-フラスコでこの細胞を培養した場合、撹拌翼下部の細胞は、一周期30.6秒を77910回繰り返したとき(約28日)、その生存率が50%に低下することが示唆された。このような応力履歴による生存率への影響を定量的に示した例は本研究が初めてである。
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