研究概要 |
微生物による代謝産物の効率的生産を行うためには、遺伝子組み換え等、DNAレベルでの微生物改変に関する研究と同時に、工業的大量生産の立場からはバイオリアクターの制御培養、とりわけ知識ベース制御に関する研究がますます重要となってきている。 我々はファジィ制御とニューラルネットの両方の利点を兼ね備えた新しいニューロファジィ制御アルゴリズムを提案し、その有効性を示すために、遺伝子組み換え大腸菌(E.coli,JM103)の制御培養実験を行った。 Fig.1に、提案したファジィニューラルネット(FNN)の構造を示す。FNNの入力変数としては、pHの変化と、オンライン濁度計から得られる菌体濃度をもとに計算した比増殖速度とを考え、FNNの出力変数としては基質流加流量を考えた。 まず過去の培養データをFNNに学習させ、そのFNNを用いて培養実験を行った。その結果84g乾燥菌体重量/Lという高密度培養を達成することができた。しかし遺伝子産物であるbeta-ガラクトシダーゼの生産性はあまり高くなく、この原因について検討した結果、遺伝子発現の誘導前後でプロセスの動特性が著しく変化するため、別々のFNNを用意する必要があることがわかった。Fig.2はこの場合の培養結果で、先の結果に比べて約4倍高い遺伝子産物の生産性が達成できた。 以上、本研究結果から提案したニューロファジィ制御方策がバイオプロセス制御に非常に有効であることが実証できた。
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