研究概要 |
本研究者が先に研究開発したマイクロ波誘導窒素プラズマ用のOkamoto Cavityをベースに、マイクロ波電力(2.45GHz,≦1.5kW)を用いて、大気中でヘリウムプラズマ(He MIP)を安定に定常的に生成することに、世界で初めて成功し、その基本的な特性を、発光分光分析法と質量分析法を用いて明らかにした。 Okamoto Cavityは、扁平導波管(6mm×109.2mm)の中心部に円錐状の内導体と円筒状の外導体を同心状に設け、内導体の先端と外導体の先端部に設けたフロントプレートとの間に表面波を励起させ、電界強度の径方向分布が中心軸上で周辺部より弱いV字型になるように構成した。放電管は同心状の外管と内管とで構成し、中心軸上に設置した。外管にはプラズマ生成のためのプラズマガス(He)を接線方向から15 1/min以上、内管には試料を導入するためのキャリアガス(He)を導入することにより、分析に適したド-ナツ状のプラズマを、安定に生成できた。 このHe MIPの発光強度はフロントプレート前方10mmでHe I(587.6nm,23.0eV)が最も強く、次いでHe I(388.9nm,23.0eV),He I(667.8nm,23.1eV)の順となり、OH(306.4nm,4.1eV)はじめOI(777.6nm,10.7eV)なども微弱ながら存在した。 ガス試料としてアルゴン(イオン化電圧15.8eV)や窒素(15.5eV)を極微量(100ppm)導入したとき、Ar I(811.5nm)やN I(746.8nm)などが検出できた。従来のアルゴンプラズマに比べ、イオン化電圧の高い元素の分析ができるようになった。 一方、溶液試料(霧化して導入)を分析するとき、従来の同軸型のニュマティックネブライザーを用いると効率が低くプラズマも不安定になったが、超音波を用いたネブライザー(自作)を用いると、これらの問題は解決できた。 マイクロ波電力1kWのとき、励起温度は5,500K(Feの原子線の発光強度のボルツマンプロットから算定)、電子密度は10^<14>/cm^3(Sahaの式をベースにFeの原子線とイオン線の発光強度比から算出)が得られた。これらの値は現在世界最高である。 現在、このHe MIPを用いた質量分析法の構築を進めている。
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