本申請者はコロイド結晶の結晶弾性率が極めて小さく、単結晶を含む試験管などの容器を倒置撹拌すると結晶構造が完全に破壊され融解するが、試験管を静置すると再び結晶が成長してくることを見いだした。本研究においては、この1年間に、この優れた特徴を利用して巨大コロイド単結晶の成長過程を世界で初めて明らかにすることができた。主な研究実績は以下の通りである。 1 単分散性が最も優れているDow Chemical社製のポリスチレン粒子(粒径:80-200nm)を購入した。更に、最近市販されるに至った高単分散性コロイダルシリカ粒子を入手した。そしてイオン交換樹脂を用いてコロイド分散液を完全に脱塩させた。 2 巨大コロイド単結晶が出現するための粒子濃度などの実験条件下で種々の巨大コロイド単結晶を発現させた。脱塩を完全に行うためにイオン交換樹脂を4週間以上共存させた。 3 近接カラー写真撮影および購入したモニターマイクロスコープを用いたカラービデオ撮影と画像処理により、試験管の倒置と静置により、巨大コロイド単結晶が成長してくる様子を調査した。 4 透過光および反射光スペクトル測定により巨大コロイド単結晶が成長してくる過程を定量的に調査した。 5 以上の観測データを基に、均一、不均一両核形成速度を測定し、結晶成長過程を速度論的に解析することに成功した。
|