ゼオライト細孔内に吸着された分子の状態について、吸着分子自身、及び吸着分子と相互作用する金属イオンの両者をモニターすることによって調べるために固体NMRを用いて研究を行った。ゼオライトとしては、骨格構造、細孔径、孔路径の異なるY型とA型ゼオライトを用い、吸着分子としては最も簡単な水分子を対象とした。初めに、ゼオライトのイオン交換能を利用し、核四極子相互作用によるスペクトル線幅の広がリを持たないCdイオンをゼオライト構造内に導入した後、飽和吸水した試料を調整した。この試料を加熱し吸水量を種々変えた後、NMR測定を行った。水分子の^1H NMRについては通常の測定と併せ緩和時間の測定を、またCdイオンの固体^<113>Cd NMRについては通常の溶液と同じシングルパルスによる測定、これにMASを併用した測定、及びCP-MASによる測定を行った。これらのNMR測定と得られたスペクトルの解析から次の結論が得られた。 Y型ゼオライト細孔内の水分子には^1H NMRで観測される溶液状態に近い比較的運動の速い水分子と、^1H NMRでは観測が不可能であるが、^<113>Cd NMRのCP-MAS法によってのみ存在が確認される非常に運動の遅い水分子とが存在する。一方、A型ゼオライトにおいては、Y型における2種類の水の中間の状態にあるような一種類の水だけが存在することが確認された。Y型とA型ゼオライト中に存在する水分子の運動の違いは、ソーダライト構造を結ぶ骨格構造の違いと、この構造によって作られるスーパーケージの大きさの違いを反映していることが示された。
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