本研究では、一般には全く窒化しないとされているバルク状のAlの窒化を試みた。すなわち、バルク状のAlとして約2mm径のAlを用い、これに反応開始剤としてアトマイズ粉を混合し、さらにこれらの表面を酸化、またはこれらにY(NO_3)_3・6H_2Oを添加した後、窒素ガスと反応させた。その結果、今年度は次のような結果を得た。 原料Alの表面をわずかに酸化した場合、バルク混合率が40%以下ではバルク状Alが窒化するという傾向が観察された。さらに、バルク混合率が20%以下では窒化温度を1300℃にすると、一回の操作でほぼ100%バルク状Alを窒化させることができた。ついで、原料AlにY(NO_3)_3・6H_2Oを添加すると、1000℃ではバルク混合率40%まで、バルク状Alをほぼ100%窒化させることに成功した。このバルク混合率は表面酸化の場合よりも多かった。さらに、1300℃ではバルクの混合率が50%でも、バルク状アルミはほぼ100%窒化した。原料AlにY(NO_3)_3・6H_2Oを添加した場合は、バルクが100%、すなわち2mm径のAlのみの場合でも一回の操作で窒化率は1000℃で32.5%、1100℃以上では60%以上となった。さらに、この場合に得られた生成物を再度窒化したところ、窒化率はほぼ100%となった。すなわち、バルク状のAlのみでも2回の窒化操作を行なえばAlNが得られることがわかった。この際の Y(NO_3)_3・6H_2Oの添加効果については、これが加熱によりY_2O_3となり、さらにAlNの焼結を助けるとされているY_2O_3-Al_2O_3系の化合物となって窒素原子の輸送を助けたものと考えられた。 以上、条件さえ整えばバルク状のAlでも窒化されることが示された。このように、バルク状アルミの窒化が可能となれば、アトマイズの工程が削除され、より低価格でAlN粉末が得られると考えられる。
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