研究概要 |
本研究では、バルク状のAlとして粒径約2mmのAlを用い、従来不可能とされてきたバルク状Alの窒素ガスとの反応を試みた。 まずバルク状Alに種々の割合で反応性の高いアトマイズ粉を混合して、バルク(全量8g)を窒化させた。その結果、少量のY(NO_3)_3・6H_2Oを加え、1300℃で窒化した場合、バルク混合率が0〜50%の範囲で全体の窒化率が98%以上となった。さらに、バルクのみの場合でも、1300℃で窒化率は70.6%となった。そして、この場合に反応管をステンレスから黒鉛にかえたところ、窒化率は1050℃で98.8%、1300℃では99.3%となった。すなわち、このようにして粒径2mmのAlを一回の窒化操作でほぼ100%窒化することに成功した。この生成物中には、直径約2mmの中空殻状のものが多数見られた。そして、殻の外側には粒径1μm程度の微粒子が観察された。これらのことおよび反応管内の温度変化の測定結果より、つぎの窒化機構が考えられた。まず、Y(NO_3)_3・6H_2Oの添加効果により、Al粒表面の窒化反応が促進される。そして、その反応熱により粒内のAlが蒸発し、Al粒の外でN_2ガスと気相反応して、1μm程度の細かいAlN粒子を生成する。そこで、つぎに反応促進剤を用いずに初期の窒化を促進するため、Al線材(φ2mm,ι50mm)を電解エッチングし、その表面を活性化して窒化を試みた。その結果、1300℃で2hr窒化した場合に窒化率は最高で99.6%となり、Al線材はほぼ完全に窒化した。 以上、本研究では、バルク状Alに、Y(NO_3)_3・6H_2Oを添加、あるいはエッチングを施すことにより、従来窒化が不可能であったバルク状Alを、完全に窒化することに成功した。この結果は、現在高熱伝導性LSI基板として注目を集めているAlN焼結体の原料製造に対して、少なからぬ影響を及ぼすものと期待される。
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