石炭液化油の構成成分については、これ迄GC-MS分析による多くの研究がなされ、成分の同定、帰属に対して成果が挙がっている。しかし石炭液化油は複雑な多数成分から成るために、予備分離を施したフラクションであっても、このGC分離は高分解能キャピラリーカラムを用いても完全な分離が難しい。このために、GC-MS分析による液化油成分の同定において、GCからの共溶出によるMSスペクトルの重複を生じ、スペクトルの解析が難しい。 研究代表者らはHPLC GC-MS法によって、化合物クラス(飽和炭化水素、芳香族環数毎)に予備分離したフラクションに対して、化合物タイプ同族体のZ数マスクロマトグラムとしてデータ処理、整理を行い、これらのスペクトルの解析、収集を行なってきたが、上述の問題点のために解析に障害となっていた。GC-MS/MS法はGCで完全に分離できなかった重複成分を第一段マスにおいて質量による分離を行ない、ほぼ単一成分となし(ペアレント分離)、このフラグメントイオン(ドウタ-イオン)をQ3においてドウタ-スペクトルとして測定する。これよりGC-MSにおける問題点は画期的に解決が計られる。 本研究では石炭液化油にGC-MS/MS法を適用した。石炭液化オイル分をHPLCによって化合物クラスに分類し、この内1環芳香族類に対して、GC-MC/MSを測定し、MSスペクトルを得た。 液化油オイル分を各化合物タイプ同族体(Z数)毎にZ数マスクロマトグラムとして分類、整理し、この同族体成分のドウタ-イオンMSスペクトルの収集を行なった。この化合物タイプ同族体系列によるドウタ-MSスペクトルの収集は、石炭液化油成分の同定、更にデータのファイルによって、今後有効に利用される。
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