研究概要 |
ポリビニルアルコール(PVA)はビニル型ポリマーで唯一生分解性が確認されており、これを機能性を有するビニル型ポリマーの主鎖中に共重合的に組み込むことにより、機能と生分解性を併せ持つポリマーが得られる。しかし、ビニルアルコール(VA)-ブロックがPVA分解酵素の基質となるために必要とされる構造の詳細は分かっていない。 本研究では、VA-ブロックがポリマー鎖中において生分解性セグメントとして機能するために必要とされる構造の詳細を調べる目的で、PVA分解酵素の基質となり得る最小構造として、VAのアイソタクチック型量体(i-3VA)、立体構造の影響を調べるために水酸基の立体配置が1つ異なるアタクチック型3量体(a-3VA)、および連鎖長の影響を調べるためにアイソタクチック型5量体(5-VA)を合成した。これらの化合物に対してPVA分解菌群(PVA-IMX)及び単離した2種類のPVA分解菌(Pseudomonas sp.113 P3,Alcaligenes faecalis KK314)を作用させることにより生分解性の検討を行なった。その結果、生分解性はi-5VA>i-3VA>a-3VAの順に優れた。VAの2量体に相当する2,4-ペンタンジオールは生分解性が認められなかった。また、Pseudomonas sp.113P3およびAlcalingenes faecalis KK314よりPVAデヒドロゲナーゼを精製し、VA-ブロックに対するデヒドロゲナーゼ活性を測定したところ、活性の強さはi-5VA>i-3VA>a-3VAの順となり、特にi-5VA対してPVAよりも高かった。以上の結果から、VA-ブロックがPVA分解酵素の基質となり生分解性セグメントとして機能し、主鎖が開裂されるのに必要とされる構造はVAのアイソタクチック型3〜5量体以上であることを見いだした。
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