研究概要 |
本研究は,近い将来の人口老齢化問題の一助になることを意識したもので,歯,人口歯ならびに歯科修復部分に高い撥水・撥油性を付与させるためのフッ素系シランカップリング剤を開発し,口腔内の衛生面向上を計ることを目的としている。昨年度合成に成功したシランカップリング剤のうち,ガラス表面で高い汚濁防止効果ならびに耐久性を発現したC_<10>F_<21>C_2H_4Si(OCH_3)_3で表面改質された2種類の歯科修復用材料を用いて色素の沈着・脱離テストの検討を行った。用いた材料(Silux Plus,Clearfil Photo Anterior)はBis-GMA系のポリマーでシリカフィラーを80%程度含有するものである。本シランカップリング剤による表面改質試料と未改質試料について,紅茶液およびオイルオレンジ中にそれぞれ一定時間(1日,1週間,2週間,3週間,4週間)浸漬したのち,接触角の減少,色差測定ならびに超音波洗浄後の接触角の回復程度と色差測定を行った。その結果,いずれの処理液中に浸漬したものもシランカップリング剤で改質されたものは,色差値(ΔE^*ab)の増加傾向が未改質材料に比べてほぼ半分程度であり,着色しにくいことがわかった。紅茶液中に4週間浸漬し着色したものでは接触角(改質直後は111.6°)は73.7°まで低下したが,超音波洗浄するとにより,95.1°まで回復した。また,オイルオレンジの場合,改質直後85.6°であったものが,着色により29.9°まで低下し,超音波洗浄で52.1°まで回復した。このことは,実際に歯または義歯表面を改質した場合,毎日の歯磨きにより常に高い接触角を維持するものと考えられる。また,改質したガラスおよびコンポジットレジン(Z100;3M)を滅菌後,in vitroにて細菌性プラーク(Streptococcus mutans Ingbritt)懸濁液中に懸吊し,24時間嫌気培養した。この試料の超音波発生装置内でのプラーク脱離量を超音波照射の出力と時間を種々変えて調べたところ,200W/60秒の照射で細菌の残存付着はほとんど見られなかったが,同様にして調べた未改質試料では依然として多くの細菌が認められた。
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