メチルフェニルスルフィドの酸化反応により、種々の置換基を有する新しい芳香族スルホニウム塩の合成法を確立した。分子軌道計算から、芳香族スルホニウムはスルホニウム基側に電子密度が偏っおり、明らかに分極構造となっていることを確認した。超分極構造を有するスルホニウムとして、電子供与性基を導入した(4-メトキシフェニル)ジメチルスルホニウム、(4-メチルチオフェニル)メチルフェニルスルホニウムを合成、結晶を単離した。(4-メチルチオフェニル)メチルフェニルスルホニウムは、295nmに極大吸収を示し、光照射(360nm)により選択的にチオアニソールへ分解することを確認した。プロトン供与性の高いメタノール、またはアセトニトリル中で、迅速、かつ選択的に光崩壊を生起させることを可能とした。 さらに、4-メチルチオフェニルチオベンゼンを出発とした重合系から、チオエーテルとスルホニウムが交番結合したポリスルホニウムを合成した。ポリスルホニウムは求核剤と反応させることにより、容易にポリチオエーテルにすることが可能である。また、ポリスルホニウムは326nmの光照射により主鎖が切断されて、原料として回収(80%)できる。一方、254nmの光照射では強酸(プロトン)を固相系で発生することが観測された。この現象は、スルホニウムを他樹脂と混合し光照射により化学増幅的に崩壊するプロセスへ適応できることが新しく確認できた。 以上より、高分子芳香族スルホニウム化合物が超分極構造を有し、使用後簡単に出発原料へ分解できること、さらに光酸発生による他樹脂の分解剤となる特徴ある光反応性を示すことが明らかにされた点は、意義あるものと考えられる。
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