本研究では、デンドリマーと呼ばれる樹木状の多分岐ナノスペースの内部にクロロフィル類似のポルフィリン錯体(電子供与体)を共有結合により一分子だけ内包した戦略的な光機能性超分子(下図:カゴポルフィリン)を構築した。このポルフィリン錯体は、分子量が8480の巨大単一分子で、直径8ナノメートルの球状構造を有しており、樹木状分子鎖がコアのポルフィリン錯体面の上下に広がるため、その疑似的なカゴ内部でのポルフィリン錯体部位の完全孤立化が保証されている。これまでの検討(種々の電子受容体存在下でのカゴポルフィリン錯体の蛍光消光の研究)から、サイズの小さな電子受容体分子はカゴを通過してコアに到達できるが、サイズがある程度大きな電子受容体分子はカゴを通過できず、コアのポルフィリン錯体と相互作用できないことがわかっている。即ち、このカゴポルフィリンは、分子をサイズによって認識できる光機能性ナノフラスコとみなすことができる。 本年度は、この点に着目し、カゴ内部に侵入できない嵩高い電子受容体の共存下、光照射によりカゴ内部のポルフィリン錯体コアから外部の電子受容体への光誘起電子移動反応を起こさせ、その電子を内部コアへの逆電子移動よりも速く(長寿命の電荷分離状態の利点)第3成分に移動させることの可能性を検討し、人工光合成反応の構築につないでいくための基礎を確立した。
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