医薬の分野などで光学活性体の効率よい大量合成法の開発の必要性が高まっている。本研究は近年Sharplessによって開発されたオレフィンの不斉ジヒドロキシル化反応(以下AD反応と略す)が真に実用的な不斉反応の手法となってきたことに着目し、この反応と我々の開発したアセチレンのヒドロマグネシウム化反応とを組み合わせ、有用キラル中間体の大量合成法を確立することを目的とした。1-トリメチルシリル-2-アルケニルアセチレンのAD反応を行なったところ高収率でオレフィン部位がジオールに変換されたアセチレンジオールが95%以上の光学純度で合成できた。このジオールにヒドロマグネシウム化反応を行なった後、その反応系にニトリルを作用させるとトリメチルシリル基を有す光学活性フリルアルコールが90%以上の収率で得られた。一方、ニトリルでなく炭酸ガスを作用させたところ、トリメチルシリル基を有す光学活性ラクトンアルコールが85%の収率で得られた。反応は一般性があり、また10g以上のスケールでは反応を行なっても何ら問題はなくさらに生成物に変換する途中でラセミ化などは全く起こっていないことも確認しており、実用的な光学活性フリルアルコールおよびラクトンアルコールの合成法となることがわかった。生成物は反応性に富んだトリメチルシリル基を有しておりこれら生成物は有用なキラルビルディングブロックとなることが期待される。
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