研究概要 |
我々はすでに、メソ型1,3,5-トリオールのアセタール化反応にl-メントンを用いると、pro-R酸素と3位の酸素の間での反応がエナンチオ選択的に進行し、3連続不斉中心を持ち光学活性合成原料として有用なメントナイド誘導体が効率的に合成できること、さらに本反応における不斉識別の要因としてメントナイド誘導体におけるジオキサン環の側鎖部分とメンタン環の間にはたらく分子内van derWaals安定化相互作用が大きいことを明らかにしてきた。今回、メントンに代わり、さらに高いエナンチオ選択性の発現が期待されるキラルケトンの分子設計ならびにその合成と反応を検討した。 その結果、メントンとのアセタール化反応で認められる立体選択性が、MacroModelを用いた分子力場計算により満足のゆく精度で再現できることが明らかとなった。分子力場計算により、種々のメントン類縁体より生成するアセタールの熱力学的安定性を調べたところ、メンタン環の7位のメチル基をt-ブチル基に置き換えた構造の7,7,7-トリメチルメントンを用いると、ジオキサン環の側鎖部分との間の安定化相互作用が増大し、より高い選択性が期待できることが示唆された。そこで、トリメチルメントン(ラセミ体)を合成し、種々の1,3-アルカンジオール類との反応を検討したところ、特にジオキサン環の測鎖のかさ高さが大きい場合、選択性が2倍程度まで向上することがわかった。しかしながら、メソ型1,3,5-トリオールとのアセタール化では顕著な選択性の向上は認められなかった。 本研究と並行して、メントンとのアセタール化を用いるラセミ体3-ヒドドロキシカルボン酸の不斉識別を検討した。その結果、メントンとのアセタール化がヒドロキシカルボン酸類の光学分割ならびに不斉合成に一般的に利用できることが明らかになった。
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