研究概要 |
パラジウム触媒と銅塩を用い末端オレフィンと水との反応からメチルケトンを合成する方法は、有機化学における代表的な酸化反応の一つと言える。我々は、水を用いなくても分子状酸素によりオレフィンが直接ケトン化される等の知見より、共存する銅塩は系中でパラジウムと複合錯体を形成し触媒作用を発揮することを示している。このことを基礎とし本研究課題では、まず分子状酸素を酸化剤として用いる手法により、分子内に官能基を持つ末端オレフィンからアルデヒド体の選択的合成法を開発した.また、1,1-二置換オレフィンのアセタール化反応で生成するプロキラル炭素の立体制御について検討した.その結果を以下に示す. 1 塩化パラジウムと塩化第一銅をヘキサメチルホスホルアミドと組み合わせた複合系触媒を用いると、アリルアミドやアリルアセタートは分子状酸素により容易に酸素化されアルデヒド体を優先的に与えることを見い出した。また、分子内にラクタム骨格を持つアリル系化合物にも本酸化反応は適用できることが判明した。 2 分子内に光学活性オキサゾリジン骨格を持つメタクリルアミドに塩化パラジウムと塩化第一銅触媒を用いてアルコールを反応させると、オレフィンの末端位が選択的にアセタール化され、光学活性アルデヒド前駆が高い不斉収率(95%de)で得られることを見い出した。 3 上記の複合触媒系に光活性ジオール、カルボン酸等の配位子を組み込みメタアクリル酸誘導体のエナンチオ選択的アセタール化反応を検討した.その結果、メタアクリルアミド誘導体がこの型の反応に対し高い反応性を示すことが判ったが、満足する不斉収率を達成することはできなかった.この点は今後の検討課題として残された.
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