研究概要 |
コバルトポルフィリン触媒によるオレフィンへの還元的酸素付加反応について,応用範囲を詳細に研究した。また,酸素に代え亜硝酸エステルを用いる還元的ニトロソ化反応についても検討した。 触媒量のコバルトポルフィリン錯体を触媒とする還元的酸素付加反応について,共役ジエノン化合物からγ-ヒドロキシ-α,β-不飽和カルボニル化合物およびγ-ヒドロペルオキシ-α,β-不飽和カルボニル化合物が一般的に高収率で得られる反応条件および後処理条件を確立した。 次いで,この反応を天然有機化合物の合成に利用する研究を行った。2量体マクロリドである(-)-ピレノフォリンおよびショウガより得られる微量抗酸化成分6-ヒドロキシショウガオールとその関連化合物を還元的酸素付加反応をキ-ステップとして全合成できた。 更に,オレフィンの還元的ニトロソ化反応の開発を試みた。共役オレフィンをコバルトポルフィリン触媒存在下,亜硝酸t-ブチルとトリエチルシランと反応させると,ヒドロニトロソ化が起こりオキシムが得られることがわかった。置換スチレンおよびα,β-不飽和エステルから相当するアセトフェノンオキシムおよびα-ヒドロキシイミノエステルが生成した。反応はオレフィンのヒドロメタル化により生成するσ-アルキルコバルト錯体が亜硝酸エステルを求核攻撃して起こると考察した。オレフィンのオキシムへの新変換法となる可能性があり,今後収率や反応選択性の面で改良を予定している。
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