研究概要 |
本研究は不斉認識能など高度な分子認識能を有するオリゴ糖の合成を目的とし、このことをモノマーの合成、立体特異的な重合によるオリゴ糖の合成、オリゴ糖の分子認識とに分けて研究を行った。具体的な成果を以下に記す。 1)モノマーの合成:ヘキソースとしてD-マンニトールのほかL-イジトール、D-グルシトールなどを用い、1,2:5,6-ジエポキシヘキソースを合成した。また、3,4-位の置換基にアリル、メチル、ペンチル、デシルなどを有するモノマーも合成した。 2)オリゴ糖の合成:マンニトールおよびイジトールから誘導したジエポキシモノマーのBF_3・OEt_2やSnCI_4によるカチオン重合では2,5-アンヒドロ-D-グルシトールが、グルシトールから誘導したモノマーからは2,5-アンヒドロ-D-マンニトールを繰り返し構造としたポリマーが得られた。この様にまた、1,2:5,6-ジエポキシヘキソースのカチオン環化重合は位置および立体特異的であった。一方、KOHやt-BuOKによるアニオン重合、2AIEt_3/H_2O/アセチルアセトンやZnEt_2/H_2Oによる配位重合では、いずれのモノマーの重合からもポリマーが得られなかった。なお、配位アニオン重合ではビシクロ化合物が得られた。 3)オリゴ糖の分子認識能:オリゴ糖の分子認識能は液膜輸送系を用いて検討した。金属カチオン識別能では、2,5-アンヒドロ-D-グルシトールを繰り返し構造としたポリマーの選択輸送能はK^+>Rb^+>Cs^+>Na^+であたっが、2,5-アンヒドロ-D-マンニトールを繰り返し構造としたポリマーは全く金属カチオンを輸送しなかった。また、2,5-アンヒドロ-D-グルシトールを繰り返し構造としたポリマーはアミノ酸に対して不斉認識能を示したが、2,5-アンヒドロ-D-マンニトールを繰り返し構造としたポリマーは不斉認識能を全く示さなかった。
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