研究概要 |
圧電・焦電・非線形光学特性等を示す強誘電性高分子は,一本の鎖として極性構造を保ち,さらに凝集構造(結晶)としても極性構造をとらねばならない.さらにこの極性が電場で反転する必要がある.一方,鎖間で水素結合を作る高分子は,水素結合の量と質により様々な凝集構造を形成することができる.本研究では,強誘電性の必要条件を満足するような構造を実現すべく水素結合性官能基の形状・体積・結合強さ等を考慮した高分子を合成し,その特性を評価することを目的とする. 我々はすでにフッ素系強誘電性高分子についてある程度分子設計を確立しているが,水素結合性強誘電体についてもその手法を用い分子構造を設定し,それを合成し評価を行った. 1.水素結合性高分子のうちポリウレタンに注目し、はじめて強誘電性が確認された.この材料の焦電率は十分応用にもちいることができる大きさであった。従来このような材料では奇数炭素構造が必要条件であったが、このポリウレタンでは結晶中でさえ分子運動性偶奇にかかわらず強誘電性を実現できた。 2.水素結合の強い奇数炭素を持つポリチオユリア,奇数炭素を持つポリスルフォアミドを合成したところ結晶状態では非常に安定であり電界による双極子配向はできなかった。しかし急冷した非晶状態で分極反転挙動を示した。 3.弱い水素結合を作るシアノ系高分子およびフッ化ビニル系高分子、フッ素系ビニルアセテートにおいても強誘電性が確認できた。 この研究により多くの極性高分子が強誘電性を示すことがわかった。
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