研究概要 |
高分子に優れた特性や機能を発現させるためには、分子量分布や立体構造を規制することが望ましいが、それらを同時に規制することは一般に困難である。本研究者らは置換アセチレンのリビング重合を達成したが、その立体特異性重合は困難であった。本研究では、置換アセチレンからの立体規則性リビングポリマーの合成の可能性について検討し、立体規制に有効な重合触媒の開発を試みた。以下に研究成果の概要を述べる。 1.tert-ブチルアセチレンの立体特異性リビング重合の検討-tert-ブチルアセチレンの重合をMoOCl_4-n-Bu_4Sn-EtOH(1:1:1)触媒を用いてトルエン中、0℃および-30℃で行った結果、立体規則性リビングポリマー(M_w/M_n1.12,シス含量97%)が生成することが明らかとなった。ポリマーのシス含量は炭素13NMRにより評価した。この重合のリビング性は分子量分布が狭いまま分子量がモノマー消費量に比例して増大することから確認した。MoCl_5-n-Bu_4Sn-EtOH(1:1:1)触媒を用いた場合同様であるがやや劣る結果が得られた(M_w/M_n1.24,シス含量90%)。 2.(σ-メチルフェニル)アセチレンの重合における分子量分布と立体構造の同時規制の可能性の検討-MoOCl_4-n-Bu_4Sn-EtOH触媒を用いてトルエン中、0℃で(σ-メチルフェニル)アセチレンの重合を行い、生成ポリマーを解析したところ分子量分布がかなり狭く(M_w/M_n1.30)、シス含量が77%と比較的高いことが明らかとなった。-30℃〜+30℃において分散比は重合温度が低いほど小さくなるが、シス含量は0℃以下ではほとんど変化しなかった。 3.置換アセチレンの、MoOCl_4に基づく新しいリビング重合触媒系の開発-以前に開発したMoOCl_4-n-Bu_4Sn-EtOH(1:1:1)以外の新しい触媒を開発するために、共触媒としてEt_3Alを用いてリビング重合の可能性を検討した。その結果、MoOCl_4-Et_3Al-EtOH(1:1:4)触媒により分子量分布の非常に狭い(M_w/M_n<1.05)リビングポリマーが得られることが分かった。
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