1.リグニンから誘導される重合性モノマー(1)の合成および、位置異性体の分離 1の2種の位置異性体の単離と各々の性質および、重合性について検討した。2種の位置異性体の単離はL.H.Bockらの方法を参考にし、1をアセチル誘導体とし、優先晶出法により分離に成功した。より高い融点を示す異性体をX線結晶構造解析した結果、交付申請書の計画で示したaおよびbの型の構造であることが明らかとなった。 2.重合性 単離した1a、1bの単独および、1aと1bの混合物の加熱溶融重縮合(減圧下280〜290℃)を行い生成物の比較を行った。また、位置異性体比率が1:1である混合物と、1aおよび1bの単独の重縮合を行った結果、混合物ではポリエステル(〔eta〕=0.3;o-クロロフェノール中25℃)が生成するのに対し、1aおよび1b単独では、短時間(30〜50分)で、フラスコ内容物が不融となることがわかった。この環状2量体は、芳香族が向かい合った歪の大きい構造をとっていると考えられる。以上の結果、これらのモノマーの立体構造が重縮合反応の機構に対して著しい影響を及ぼすことが明らかとなった。この結果は、当初の予想をはるかに越える重合性の違いであり、注目すべき知見である。この様な系は、反応機構を解明する上でも重要であり、1から有用な機能を持つポリエステルへの発展が期待できる。
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