多成分多相高分子系からの結晶性高分子鎖の結晶化挙動の評価を、高分子ブレンド、結晶性成分鎖のみから成るブロック共重合体、結晶性成分鎖と非晶性成分鎖とからなるブロック共重合体および2成分高分子ネットワークについて行った。 高分子ブレンドについては、融体中からの結晶化速度が非常に遅いアイソタクティックポリメチルメタクリレート(iPMMA)の結晶化を、相溶系であるポリエピクロロヒドリン(PECH)、相図を有するポリエチレンオキサイド(PEO)、結晶性高分子であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)をそれぞれ相手高分子とするブレンドから行った。その結果、いずれのブレンドからもiPMMAの結晶化が非常に速くなることが観察された。この原因は、それぞれ、相溶によるガラス転移温度の降下による拡散速度の増大、相分離による低ガラス転移温度相の出現、および先に結晶化した相手高分子の結晶面による核生成剤としての役割、であると結論された。結晶性成分鎖のみからなるブロック共重合体からの結晶化においては、特にトリブロック共重合体において中心成分鎖の結晶化速度が促進されるとともに、両端成分鎖の結晶化速度および結晶化度が低下することが観察された。また、結晶性・非晶性成分鎖から成るブロック共重合体においては、結晶性成分鎖がミクロ相分離により非常に小さい領域に束縛されるため結晶生成が不可能であった。さらに、ネットワーク場における結晶化について、そのアブラミ指数は変化しなかったが結晶化速度が低下した。
|