グラフト共重合体は、その分岐点で異種高分子鎖が1:2に分岐しているため、ミクロ相分離界面ではそれらが非対称に配列されることが最大の特徴である。この特徴が表わす性質を明らかにするため、報告者はグラフト共重合体のうち最も単純なモデルとして一点よりA鎖1本とB鎖2本が分岐したABB型の星型共重合体を取り上げ、前年度に科学研究費一般研究(C)の援助を受けてその合成方法を確立した。本年度は、その手法を用いて試料を調製し、そのミクロ相分離構造を調べてブロック共重合体と比較した。 共重合体の構成成分は、ポリスチレン(S)とポリ(2-ビニルピリジン)(P)である。アニオン重合を基本とした合成、精製を繰り返すことにより、分子構造の明確なSPP型グラフト共重合体をSとPの比率を変えて調製した。Sの体積分率は0.24から0.58までの4種類である。これらの試料のフィルムを溶媒キャスト法により作成し、熱処理後そのミクロ相分離構造を透過型電子顕微鏡写真撮影とX線小角散乱実験により詳しく観察した。 モルフォロジー観察の結果、スチレンの体積分率が0.24、0.34の場合にはSのシリンダーがPのマトリックス中に六方状に配列されたシリンダー構造が、0.40、0.58の場合には交互ラメラ構造が見られた。これらの結果をブロック共重合体と比較すると、I)シリンダー構造からラメラ構造に転移する組成比をスチレンの体積分率で表わすとグラフト共重合体の方が大きい、II)ラメラ構造の繰り返し周期はグラフト共重合体の方が小さい、ことが明らかとなった。
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