研究概要 |
1)PVAの高重合度化および高立体規則性化の研究の進展を図るため、ピバル酸ビニルをモノマーとする、種々の溶媒中における低温溶液光重合反応を行い、DMSO溶媒中で32,000の高重合度が、n-Hexane溶媒中で67.5%の高いdiad-tacticityが得られることを見いだし、溶媒効果の影響に対する新たな知見を得た(R.Fukae,et al.,Polym.J 投稿中)。これと関連して、安息香酸、トリフルオロ酢酸ビニルをはじめ種々のビニルエステルの置喚基が立体規則性に及ぼす影響を調べ、スタッキング効果やクーロン斥力効果を解析するとともに、これらの共重合体のコアイソタクチックパラメータを求め、これを基にコタクティシティーのシミュレーションに成功した(松本輝也ほか,高分子研究発表会要旨集(神戸),P.8(1993))。 2)動的粘弾性に及ぼす立体規則性の影響については、高シンジオタクティシティーを有するPVAの、アモルファス領域の主鎖緩和の活性化エネルギー、および結晶領域における分子鎖の局所緩和温度がともに高く、水酸基の強固な分子間力がイソタクトやアタクトコンフィギュレイションに比し極めて特徴的であることを立証した(深江亮平ほか,高分子論文集投稿中)。 3)ビーム加熱ゾーン延伸により高強度・高弾性率化については、延伸装置の設計、ゲル系の調製と延伸条件などに仔細な検討を加え、高立体規則性の特異な分子間力に起困する難延伸性PVAの繊維性能の改善と向上を図り得た。さらにゾーン延伸前に湿熱延伸処理を加えることにより切断強度2.0pa、初期弾性率80Gpa以上の高強力繊維が恒常的に調製可能となった。しかしながら、微焦点ビーム加熱延伸のビーム加熱技術を確立するには、さらに検討すべき問題が多く、鋭意努力を重ねている(深江亮平ほか、高分子論文集、投稿準備中)。
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