本研究の目的は、極超音速で飛行する飛行体の各部に生じる衝撃波干渉による空力加熱現象について、高温化学反応がこれらの現象に及ぼす影響について研究することであった。本研究で得られた成果は下記の通りである。 1)高温効果として、まず振動エネルギと並進エネルギのエネルギ移動が果たす役割について調べた。高温効果としては、内部エネルギに振動エネルギを考慮した。温度モデルとしては振動平衡を仮定した。このモデルを用いて、衝撃波干渉空力加熱現象の数値計算を行い、振動エネルギを考慮した場合と考慮しない場合の効果について比較検討した。その結果、振動エネルギを考慮することにより衝撃波に誘起される非定常空力加熱量が大幅に増加し、高温環境下における振動エネルギを考慮しなければ衝撃波干渉空力加熱現象を正確に解くことができず、空力加熱量を正確に見積もることができないことが明らかとなった。 2)高温効果として、さらに解離反応を考慮した。まず、酸素ガス解離反応の場合、衝撃波の反射パターンが、解離反応を考慮することによって、初めて実験結果とよい一致を得ることができること、完全触媒性の壁においては壁面への空力加熱量がはるかに大きく、(全空力加熱量=空気力学的空力加熱量+化学反応による付加エネルギ)については、化学反応による付加エネルギが空気力学的空力加熱量よりまさることがあることが明らかとなった。さらに、空気(酸素ガス・窒素ガス)解離反応を考慮したモデルに拡張し、実験結果と比較した。その結果、空気の場合には窒素分子と酸素分子では解離する温度が異なり、かつ解離温度が低い酸素分子の方が窒素分子にくらべ約4分の1しかないこと、等の影響により比較的低い温度では、解離反応の空力加熱量への影響はあまりないことが明らかとなった。また、窒素分子も解離する比較的高い温度では解離反応の空力加熱量に及ぼす影響は大きいことが明らかとなった。 以上のことより、本研究により高温環境下における衝撃波に誘起された非定常空力加熱現象における高温効果(振動エネルギの効果、酸素ガス解離反応、空気(酸素ガス・窒素ガス)解離反応)に関する新しい知見が得られ、本研究の当初の研究目的を達成することができた。
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