研究概要 |
宇宙放射線環境に半導体デバイスが置かれた場合に発生する一次的誤動作(Single Event Upset,SEU)についてCf核分裂片を用いて研究を行った。SEU現象は累積被爆線量とは無関係に電離度の大きい1個の重荷電粒子デバイス中の能動領域を通過するときに発生するもので、入射粒子の単位長あたりのエネルギー附与(dE/dx)値によってその発生しきい値と発生断面積が定まる。 ^<252>Cfの自発性核分裂によって発生する2核分裂片の一方(質量:M_1)をSi検出器に入射させてそのエネルギー(E_1)を測定し正反対の方向に飛ぶ他方の核分裂片(質量:M_2)を試験デバイスに入射させる。運動量保存則M_1V_1=M_2V_2と、運動エネルギーE=MV^2/2の関係からE_2/E_1=M_1/M_2であることは容易に導かれる。^<252>Cfの自発性核分裂において、E_1+E_2=186MeV.(M_1+M_2)=248MeV(^<252>Cfとの質量差4は核分裂時の即発中性子の放出による)であり、またE_2に対する質量分布曲線、実効電荷の値も実験的に知られているので、E_1に対応する(dE/dx)の値はBohrの半経験式を用いて得ることができる。 0.1μmtのNi foil上に核分裂片数で100-400Bqの^<252>Cf線源を自作し大型真空槽を用いて実験を行った。この実験のために特に製作した電子回路系としては(1)Si検出器に入射した^<252>Cf核分裂片のエネルギー信号E_1をデジタル化し、バッファーメモリー上に保存する'ADC-ADC Controller系′、(2)高速でメモリーの記憶内容を走査し(0.1秒で256kbitメモリーの全アドレスを走査し誤動作アドレスを検出し、検出と同時に検出信号を発生させて、これにより、(1)のバッファメモリー上の信号をMCAに送り込む機能を持った′高速メモリースキャナー′などである。これらを用いてICメモリーの記憶内容を反転させた^<252>Cf核分裂片の(M2,E2)を同定、その(dE/dx)を決定する実験を行った。
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