船殻の加工、組立は切断と溶接に代表されるが、いずれも熱変形を伴い、特にガスやプラズマによる鋼板の切断は、入熱の管理が難しく変形要因も複雑で、精度不良の最大の原因となっている。切断精度が悪いと、次工程である溶接において開先ギャップのバラツキが生じ、溶接変形による誤差にも影響を及ぼすため、切断精度の向上が改めて見直されている。 そこで、昨年度は、切断シミュレーションのためのFEM(有限要素法)を開発するとともに、実験計測および数値シミュレーションに基づき、切断誤差を支配する主要因子の抽出と現実可能な切断精度の限界について検討した。 本年度は、切断誤差のバラツキの原因の一つと考えられる切断前の鋼材に元々存在する残留応力に注目し、その影響についてFEM解析により検討した。特に、初期残留応力の分布領域と切断線の相対的位置および切断幅の相対的大きさが切断誤差に及ぼす影響について検討した結果、これらにより切断誤差が大きく変化するため、鋼材に大きな初期応力が存在する場合には、誤差のバラツキが生じることが明らかとなった。また、切断変形とこれの原因である固有ひずみの関係に注目し、切断中の拘束が固有ひずみに及ぼす影響について実験計測を行い、これを明らかにした。これらの成果は、今後、現実の状況での切断誤差を予測、制御を目指して行く上での指針を与えるものである。
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