船体構造設計において用いられる波浪荷重は船級協会の規則で規定されているが、これらは主として静的・準静的なものであり、かつ座屈・崩壊などの最終強度を前提としたものであるため、疲労強度を主眼とした船体構造設計には適切でない場合が多い。船体の疲労強度設計において最も重要となる荷重は波浪による変動水圧である。波浪変動圧は、その振幅が時間的に変化するのみならず、船体表面上でも空間的な位相差を持つためその推定は簡単ではなく、それゆえそれらを設計に用いる場合、単純な設計荷重に置き換えるのは困難とされていた。本研究ではこのような波浪変動荷重を船体の疲労強度設計に取り入れるべく、波浪変動圧とそれによって生ずる応力分布について考察を行い、精度の良い船体構造設計のための波浪荷重について検討を行なうものである。 平成5年度は、まず、波浪中圧力の変動成分および変動成分分布形状を定義し、波浪中圧力の変動成分分布について考察を行った。すなわち、研究代表者が以前に示した境界要素法による計算法を用いて変動圧力計算を行い、波浪中圧力の変動成分の分布形状の特徴と波長・波高との関係を調べ波浪中圧力の変動成分分布形状を分類し、「見かけの波長」というのパラメータを用いると典型的な分布形状が4つとなることを示した。次に、有限要素法により実際の船体構造解析を行う場合に拘束条件や不衡力等の条件がどのように解析結果に影響を及ぼすかを簡易モデルを用いて検討した。この結果、船体の片舷モデルを用いた構造解析においては、横隔壁とその船体中心線付近において、反対称荷重における境界条件の影響を受けることが判明した。最後に、先に分類した波浪中圧力の変動成分を荷重として実際の構造解析を行ない、荷重と応力の関係について明らかにした。この結果、バラ積み貨物船の内底板における応力分布はそれぞれの圧力分布に応じて特徴的な応力分布となることがわかった。
|