海洋構造物、鉄塔および橋梁のような供用中の構造物には、波、潮流、風および走行車両など変動荷重が作用している。これら供用中の構造物を溶接により補強、補修および改造など行う場合、変動荷重下の溶接となる。 変動荷重下における溶接割れ試験を実施し、高温割れ発生の有無を評価する力学的指標として、溶接金属が割れ発生温度域内で受けたひずみの累積εtを用いることを提案した。さらに、εtを溶接前に容易に計測できる開先の溶接前相対変位変動△δで表現し、△δを力学的指標とした実用的な変動荷重作用下における高温割れ発生条件式を示した。そして、一定繰返し外荷重が作用する場合に対し、高温割れ発生条件式を適用し、その妥当性を具体的に示した。 ところで、変動荷重下の溶接で生じる高温割れの形態として、2つあることがわかった。ひとつは、1500℃程度で生じる凝固割れであり、他のひとつは1200から700℃高温ではあるが固相状態に冷却した状態で生じる割れである。凝固割れの場合、外荷重による開先の変位変動△δ(作用ひずみ)と繰返し数との積が、他の固相状態で生じる割れの場合、一周期内における作用ひずみのひずみ速度とその大きさが力学的主因であることがわかった。 一方、△δを力学的指標とした溶接施工可否判定システム構築のためのアルゴリズムを決定した。これに従い、基本となる溶接施工可否判定システムを構築した。そして、供用下にある橋梁を例に取り、その妥当性を示した。
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