筑豊炭田では旧坑口、浅部採掘跡、低地等から古洞水が湧出している。湧出地では酸化鉄の赤い沈澱物で周辺を赤く染めることから赤水と呼ばれている。炭田における石炭操業が終了し、数年が経過した昭和50年頃、炭田全域の古洞水の調査が行われた。湧水の多くは酸性で高濃度であったが20年を経過した現在、水質は改善しているものと考え、自然浄化の状態の調査を行った。平成5年は炭田東帯を、平成6年度は炭田西帯の湧水について水質調査、水理地質調査を行った。西帯は北の岡垣町から飯塚市を経て南限の山田市そして西に碓井町、桂川町と広がり最西南地の筑穂町までである。東帯と同じく圃場整備がなされており、湧水が消滅している所があった。平成6年は北部九州は希にみる異常渇水で湧水が停止、減少、平成5年は異常多雨で地下水の水質を特に経年変化を調査するには不適な状態と考えられたが得られた結果では湧水の導電率は20年前の湧水の導電率よりかなり低い値が得られており、自然浄化が進んでいるものと判断された。即ち、20年前の湧水の導電率は1000μs/cm以上を示すものが多かったが今回の調査では半数以上が1000μs/cm以下を示した。化学成分においても全体の含有量が低下し特にSO_4の低下が顕著であった。高濃度の湧水ではキ-ダイヤグラム表示での水質変化は顕著ではなかったが中・低濃度の湧水では地表水・浅部地下水の水質に変化していることが認められた。導電率の低下の傾向が過去20年間と同様に継続するものとすれば、湧水の導電率は1000μs/cm以下となり、水質源として利用可能な水となるであろう。しかし、特殊な湧水は自然浄化はなかなか進まないものもある。
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