研究概要 |
本研究は5,6年度の継続研究であり、5年度については、シラスおよびシラスから簡単に合成できるP型ゼオライト、そしてその過程で得られる濾液の3つを主原料として、優秀な青の顔料として知られるウルトラマリンを水熱反応で合成する条件の検討を行った。6年度は主に生成機構を調べる。 本研究は、従来のようにウルトラマリン発色の源である硫黄末を1000°Cで気相にしてウルトラマリン骨格のSod(Sodalite)cage内に入れるのではなく、100°C付近の低温でSod cageを造りながら液相にして入れる方法であるため、硫黄源の検討、そして一方でSodの生成条件(原料組成、濃度、温度、時間等)の検討が重要になる。これらを種々検討した結果の一部を示す。 シラスを原料とした場合は、アルカリ水熱処理で簡単にSodが生成するが、硫黄源としてS粉末またはNa_2Sを添加すると、Natr(Natrodavyne)が生成し、Sodは生成し難かった。しかしNa_2S_2O_3の添加では内部に硫黄分を含有していると思われるSod骨格が生成した(X-rayのシフトから判断)。けれども、その添加量が多いとまたNatrや石英が副成した。Naclの添加は添加量によって異なるが、Sodの結晶化促進効果があった。そして生成物の発色に大きく寄与すると言われている硫黄の含有率は7.6%と3つの原料中でシラスが最も高く、加熱による青の発色も濃かった(市販のウルトラマリンは8.6%であった)。 P型ゼオライトを原料とした場合は、7規定以上のNaOHを使用した時にP型が完全に消失して、Sodの生成が大きくなった。また硫黄源についてはシラスと同じ傾向で、硫黄分が多いとNatrや石英が生成した。つぎにP型合成後の濾液(液相)を原料にした場合は、S分の添加で上記2つに比べてNatrの生成が著しく少なかった。しかし得られた生成物の色は、概して澄んだ明るい色の傾向であった。 今後、更に上質のウルトラマリンを得るには、更に加圧での水熱反応を検討する必要があると考えている。
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