ライムギのRAPDマーカーを開発するため、1)レトロポゾンと考えられる散在型反復配列をPCRに用いて散在型反復配列に挟まれたランダムな領域のRAPDを検出する、2)ライムギゲノム中に規則的に存在すると考えられるEco O109Iサイト(Tomita et al.1993)を含む10merのプライマーをPCRに用いてRAPDを検出する、という2通りの戦略を立てた。 ライムギゲノムからコムギゲノムとの相同部分をサブトラクションする方法により、ライムギゲノムに特異的な散在型反復配列に由来する89bpのMbo Iフラグメントをクローニングした。このフラグメントにRNAPol IIIのプロモーター領域、アンチコドンおよびCCA末端を持つtRNA様構造を見いだした。そこで、TψCアームなどの保存領域をプライマーに用いてPCRを行い、増幅されたフラグメントをMbo Iフラグメントとハイブリダイゼーションさせると共に、回収してベクターpCR IIにライゲートして塩基配列を決定した。その結果、74bpのtRNA様領域を上流45bpおよび下流19bpの非tRNA領域が挟むコンセンサス配列が決定された。この散在型反復配列はtRNA起源のレトロポゾンである。下流19bpの非tRNA領域をPCRプライマーに用いると反復配列に挟まれたランダムな領域が増幅され、RAPDの検出に有効であった。 一方、Eco O109Iサイトからデザインした16種類の10merプライマーを用いてライムギおよびライムギ染色体添加コムギ系統の染色体DNAをテンプレートとするPCRを行い、10個のRAPDフラグメントの座乗染色体を決定した。さらに、これらのRAPDフラグメントを回収してPCR増幅産物とのサザンハイブリダイゼーションを行い、それぞれ染色体特異的なRAPDフラグメントであることを確認した。対照に用いたOPERONのランダムな10merプライマーでは20種類中1種類しかRAPDが検出されず、Eco O109IサイトのRAPDプライマーとしての有効性が明らかとなった。
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