ライムギSecale cereale L.のゲイムには制限酵素Eco0109Iサイト5'-PuGGNCCPy-3'が多数散在する(Tomita et al.1993)ので、EcoO109Iサイトに3塩基を付加した配列をプライマーにしてPolymerase Chain Reaction(PCR)を行い、ライムギ染色体から特異的に増幅されて染色体標識となるDNA断片を獲得した。 ライムギ-コムギ間で増幅断片長多型を示すEcoO109Iプライマーてライムギ染色体添加コムギ系統シリーズを鋳型とするPCRを行い、1R〜7R染色体にそれぞれ特異的な10種類のDNA断片を検出した。これらをアガロースゲルから回収し、ナイロンメンブレンにトランスファーしたライムギ染色体添加コムギ系統のPCR産物とハイブリダイゼーションさせた結果、いずれも回収したDNA断片以外にはハイブリッドせず、ライムギ染色体から特異的に増幅される配列であった。さらに、10種類の染色体特異的DNA断片をpMOSBlueにライゲーションし、ディレーションクローン作製して塩基配列を決定した。その結果、両端にはEcoO109Iプライマーの配列が確かに存在し、レトロポゾンに特徴的なtRNA様構造が見いだされたことから、染色体特異的DNA断片は散在型反復配列に由来し、その中のEcoO109Iサイトの変異(Internal repeated sequence variation)を反映するものと考える。これらの染色体特異的DNA断片はS.cerealeの起源の異なる自殖系統間で増幅断片長多型を示したので、STS(sequence-tagged site)化するとともに形態形質との混合分離分析(bulked segregant analysis)によってマッピングする方法を確立した。 以上のように、ライムギゲノムに散在するEcoO109Iサイトにランダムな3つの塩基を付加したプライマーによってPCRの起点となるEcoO109Iサイトが限定され、部位特異的で染色体標識となるDNA断片が効果的に増幅された。
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