研究概要 |
植物根の機能を遺伝的立場から究明するため,イネ品種オオチカラのM_2集団から短根突然変異体RM1及びRM2を選抜し,それらの生育特性や根組織を野生型と比較した. 短根突然変異系統RM1及びRM2における根の伸長は野生型に比べ発芽直後から抑制され,根系も大いに異なった.しかしながら,根色はいずれの系統(オオチカラを含む)も白く,差異は認められなかった.種子根長を比較したところ,両短根系統は野生型より発芽直後から著しく短く,発芽後6日目では野生型は12cmであったが,両短根系統は3cmであった.短根系統冠根長は野生型の約1/2であった.一方,草丈においては突然変異系統は野生型より小さい傾向を示すが,その差は有意でなかった.短根系統の根毛は野生型に比べてやや太く短いようであったが,根毛の分布には両者の間に差はなく,両者の根毛数はほぼ同じであった.根の皮層細胞の長さを比較したところ,短根系統と野生型との間には差が認められなかったが,短根系統における分裂帯の長さが野生型より有意に短かった。しかしながら,アンモニアや硝酸の根重当たりの吸収速度では短根系統が野生型より顕著に優っていたが,個体当たりの吸収速度では両者の間に顕著な差は認められなかった.また硝酸同化能力の指標である硝酸還元酵素(NR)及び亜硝酸還元酵素(NiR)の活性について,短根系統と野生型とを比較したところ,葉身でのNR及びNiR活性は両者の間で異ならなかったが,短根系統における根NR活性は野生型より顕著に大きかった.一方,調査したいずれの形質においてもRM1及びRM2との差異は殆ど認められなかった.
|