研究概要 |
植物根の機能を遺伝育種学的立場から究明するため,イネ品種オオチカラのM2集団から短根突然変異体RM1を既に選抜した.その後,より多くの突然変異体を収集するために短根突然変異体の選抜を再度試みたところ,RM1とは異なる新たな短根突然変異体RM8及びRM10が見い出された. RM8及びRM10の根長は野生型のそれぞれ70%及び30%であり,野生型より有意に短根であった.ただRM10の根長は先の短根突然変異体RM1とほぼ同じであった.つぎに根の細胞の大きさを比較したところ,RM8及びRM10の皮層細胞長は野生型とほぼ同じであったが,RM1の皮層細胞長は野生型の半分であり,根長が同じであるRM1とRM10は細胞組織的には異なっていることが明らかになった.また外観上同種の短根であっても,細胞長の短縮に起因する場合と細胞数の減少に起因する場合のあることが明らかになった.さらに,これら短根突然変異体及びそれらの野生型の相互交雑後代における短根型の分離を観察したところ,RM1,RM8及びRM10はいずれも単因子劣性型の突然変異体であり,またそれらは相互に異なる遺伝子によって支配されていることが示唆された.一方,RM1,RM8及びRM10と野生型との雑種後代を野生型に戻し交雑し,短根遺伝子に関するisogenic lineを育成するための努力を続けている.
|