研究概要 |
1.イネ品種、コシヒカリのγ線照射に由来する節間伸長高進性突然変異体(アワオドリ)を用いてこの形質を支配する遺伝子(ao-1)の遺伝様式を明らかにするため、数種の矮性遺伝子(d-1,d-18,d-35)標識系統と交雑実験を行った。その結果、何れの組み合わせにおいても2因子性の遺伝を示したが、表現型では正常型、矮性型、アワオドリ型の3タイプしか出現せず、ao-1ホモ型と二重劣性型との表現型による区別はできなかった。これらのうち、矮性型のF2個体を多数育成し、F3世代で出現するアワオドリ型(二重劣性型)の生育をaoホモ型変異体と比較したが、両者の茎葉の伸長性には有意差が見られなかった。これらの実験結果からao-1は、これらの矮性遺伝子に対して上位に作用する特異な性質を有していることが明らかとなった。 2.ao-1ホモ型個体の形態形成過程を、幼苗の組織切片を用いて調査した結果、本変異体の茎葉の高進性は、裂細胞の横方向への肥大抑制と縦方向への伸長促進によるだけでなく、同一器官当たりの細胞数の増加も伴っていることが明らかとなった。 3.本変異体の伸長中の茎葉から抽出した、可溶性および細胞壁結合タンパク質をO'Farrellの2次元電気泳動法により分析した結果、数個の変異体特異的なタンパク質の存在が確認された。これらの特異的タンパク質について現在、マイクロシークエンスの手法を用いてアミノ酸配列の同定を進めている。 4.変異体で特異的に発現しているmRNAの同定を行うため、変異体の伸長節間から抽出したmRNAを用いてcDNAライブラリーを作出した。これから任意に選抜した202個のクローンの部分配列からホモロジー検索を行った結果、約21%のクローンで既知の遺伝子との相同性が認められたが、現在さらに詳細な同定作業を進めている。
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